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2010年 01月 18日
薔薇の名前と薔薇にまつわるエピソードを記した本、
“A Rose by Any Name” を、元旦から読んでいる。 ローズウォーターを禿治療に注いだ話から、 英国で金賞を取ったのに、名前が悪くて 米国では75,000株売れ残り捨てられた話。 薔薇の名前になっている人達がどんな人だったか。 1930年代の米国ラジオでは、米国薔薇会の会長が その年の新品種について全国放送した話、などなど。 興味深い話が満載だ。 前半分を読んだところで、わたしの個人的な興味を最も惹いたのは、 「青い薔薇」に関する話だ。 米国テネシー州の大学で、 人間の組織を青色に変える、肝臓の酵素が分離され、 その遺伝子を薔薇に組み込んだ。結果、 茎と刺が青味がかり花は青くない、薔薇が生まれたという。(p.144) 一読して、人間の遺伝子を薔薇に組み込むところに違和感を覚えた。 『青いバラ』の著者、最相葉月は、クローン技術を語る研究者が、 植物の挿し木と牛のクローンを同列に語る背景について、 精神医学者ウィラード・ゲイリンの言葉を紹介している。 「科学的思考の持ち主にとっては、 一個の細胞からクローンニンジンをつくりだすという飛躍の方が、 クローンニンジンの成功からクローン人間をつくりだすという飛躍よりも 大きいだろう」(p.515) 著者自身は次のように言う。 「だがそれは、あくまでも科学的な解釈にすぎない。 人間を社会的な存在として考えるごく一般的な視点と、 科学的視点が食い違い、ぶつかりあうのは当たり前のことだ。」(p.516) 「生きとし生けるもの同士の壁をいったん一切取り払い、 再びその壁を組み立てるのであれば、 その理由を人間は探さなくてはならない」(p.517) 人間の遺伝子を持った植物を、愛でたいとか食いたいとかいう欲望は、 わたしにはさしあたって皆無だ。 しかし、 「山川草木がもついのちをわたしもわかち持っている」、 という感覚を抱いているわたしは、 薔薇と人間の遺伝子の共有を証されたのが、 一瞬どこかでうれしいようなところがあった。 瞬間的な興奮が去ると、 科学の証明が無くてもわたしの感覚は同じなのに気づき、 どこかうれしかった自分のナイーブさを、危うく感じた。 その後に残るのは、 抱えきれないものを抱えろと言われた時の、疲労を伴った嫌悪感。 茎と刺が青い薔薇自体への嫌悪というよりも、 知りたがる人間・知りたがる自分、 それに応える技術を持ってしまった、人間への嫌悪。 十九世紀末に発見された放射性物質が、 五十年で核爆弾になり、今もその対応に苦慮している現状を連想し、 これ以上の厄介事を持ち出されたら、破産するんじゃないかと不安だ。 その不安に応えられない科学者の、限界を感じる。 人間の遺伝子が入った薔薇の、花弁が青くならなかったことに、 心からの安堵を感じる。 それはただ一時的な、危機への直面の遅延なのかもしれないが。 もともと青い、ローズマリー。モーツァルト・ブルー。 “A Rose by Any Name” D. Brenner & S. Scanniello Algonquin Books of Chapell Hill, 2009年 書名はシェークスピアの『ロミオとジュリエット』の台詞、 "a rose by any other name would smell as sweet."を踏んでいる。 家名によって引き裂かれるふたり。 「薔薇を他の名で呼んだとしても、その香りは変わらず甘い」つまり、 「家名よりもあなた自身が大切」転じて、 「ものごとの本質は、その名称よりも大切」という慣用句になった。
by pippinrose
| 2010-01-18 19:24
| 活字
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Comments(2)
Commented
by
Junko
at 2010-01-18 23:07
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ぴぴんさん、こんにちは。
きれいなローズマリー!こんな寒い季節にも花が咲くのですね。育ててみたくなりました。
Commented
by
ぴぴん
at 2010-01-19 09:29
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Junkoさん こんにちは。
うちのローズマリーは、毎年冬〜春にかけて咲いています。 品種によって、樹型や花の大きさ・色が多様なので、 自分好みの品種を選ぶのも楽しいと思います。 このモーツァルト・ブルーは、挿し木でここまで大きくなりました。 今日の写真のトスカーナブルーは、昨年クリスマス・ツリーにした大株で、 花もモーツァルトより一回り大きいですが、花数は少ないです。
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