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2009年 02月 03日
吉田秋生の作品では、
女性であることによって引き起こされた痛みが、しばしば描かれて来た。 記憶にたよって正確な引用ができないが、たとえば次のような台詞。 四半世紀前の作品『吉祥天女』では、美しい女子高校生が、 襲って来た男の耳を切り落としたあげく、微笑みながら言う。 「血が怖いの? 女はね、血なんか怖くないのよ。 だって毎月血を流すんですもの」。 『河よりも長くゆるやかに』では、 友人男子に過去の傷を語った女子高生が、 「犬に噛まれたと思って忘れろ」と言われ、反論する。 「あんたは犬に噛まれたことを忘れられるの? いいかげんなこと言わないでよ」。 『BANANA FISH』の主人公は男だが、美貌の彼は、 男の暴力に対抗する『吉祥天女』の美少女の、 ヴァリエーションと言えるだろう。 『櫻の園』や、『BNANA FISH』の後日談である『光の庭』では、 「男の子のような女の子」の、女である自分への困惑が描かれた。 『海街diary』でも、サッカーをする女子中学生が描かれるが、 彼女は自分が女子であることを否認しない。男女差を認めつつ、 自分としてやれる限り、男子と一緒にやっていこうとしている。 「あなたたち男」「わたしたち女」は背景に後退し、 「あなた」と「わたし」の関係が前景化している。 男友達であっても通じるものは通じ、 姉妹であっても通じないものは通じない。 時代の変遷を思わずにおれない。 作者自身、真っ黒に日焼けして木登りしているこどもだったらしい。 今は違いは違いとして、さらりと語るようになっているが、 「女性」に収まって行く時期には戸惑いがあっただろうか。 わたし自身の体験をふりかえると、 当時どう思っていたかはともかく今になってみれば、 性差による不理解よりも、個人差による不理解を感じる。 それは先人の達成の上に乗ればこそ感じうる感慨かもしれないし、 そこで戦う必要のない、恵まれた環境に棲むからかもしれないし、 カップリングや社会化の時期を越えた、気楽さなのかもしれない。 反射光が影を作る。 吉田秋生の話、二回で終わりです。
by pippinrose
| 2009-02-03 08:50
| 活字
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Comments(2)
Commented
by
G d D
at 2009-02-03 12:03
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ぴぴんさん、こんにちは。
「吉祥天女」は非常に印象に残っている作品です。 コミック4巻持ってましたよ。白地に顔のアップ、よい装丁でしたね。 そうですか...もう20年も前になるんですね。 ...という事は読んだのは10代だった訳だ...。感慨深いです。 たしか登場人物の誰かが沖田 浩之のファンなんですよね。 スケバン久子(でしたっけ?)も懐かしい(笑) ブタジマとか呼ばれている子もいましたよね。 僕は小夜子がとても好きでした。 毛虫をそっと逃がしてやるシーンも憶えています。 ラストも余韻の残る...細部にわたって優れた作品だったと思います。
Commented
by
ぴぴん
at 2009-02-03 18:08
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GdDさん 読んでおられましたか。^_^)
今Amazonで確認したら、1983年に一巻が出てました。 既に四半世紀前ですね。本文訂正します。 そうそう、小夜子のことを見抜く男子、涼が、ヒロ君に似てるんです。 「スケバン」ということばも死語ですかね... ブタジマとは、すごい呼び名だとどきどきしたのを覚えてます。 わたしは当時は小夜子のことを思うと、思いが千々に乱れていました。 あの強い小夜子が、涼の妹とすっと仲良くなるのが印象的で、 ああなりたいと憧れました。 あの時期にあの作品に出会えて良かったなと思います。 ドラマ化・映画化もされましたね。 人間でするなら、高校生の年齢の山口小夜子と、 沖田浩之に演じて欲しいです。ふたりとも故人ですが。
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