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2012年 10月 12日
その後不思議な進み行きで、オストは
生徒さんのご家族を供養している寺で 蓮の花を活けることになる。 「オストは普段、芸術作品を創るために花を活ける。 しかし今回彼は、ひとつの祈りを活けている」 と、ナレーションが語る。 芸術作品を創ることと祈ることには、 どのような違いがあるだろうか。 日が暮れて、本堂の前で照明を浴びる蓮は、 まっすぐな茎の上の、蕾の弧と実の弧。 花群と葉が形づくる本堂の屋根に似たラインを、 丸い器が受けとめる。 長年花をもちいて芸術活動を行っているオストの 発想と技量は、おのずと見事な形を作り上げる。 出来上がったものだけを見れば、それが 芸術なのか、祈りなのか、区別はつきにくい。 肉体を通して外界に現われ出た祈りは、 言葉や、動きや、音や、形を残す。 フラワーアーティストが花をもちいて祈れば、 アーティスティックな花の造形が残る。 ひとつ思うのは、 死や、痛んだ人の心や、 自分には左右し難いものごとに向き合おうとして行う 祈りという営みは、 その行為の過程に意味があり、 結果として現われ出るものが他の人間の耳目にどう映るかは 二の次なのではないかということだ。 オストと共に震災後初めて花を活けて、 眼に力がこもり始める生徒さんたちや、 「良い日になりました。ありがとうございます」と お礼を言われるご住職は、 出来上がったものの素晴らしさはもちろんだけれども、 はかない花の命を借りて祈りを形づくってゆく、 オストの情熱に動かされたのではないか。 祈りの時が閉じた時、 彼岸と此岸の境に静かな残響を発して在るその花は、 アジア人が何世紀も蓮に託してきた思いと呼応して、 痛んだわたしの心に沁みた。 わたしも、もう一段元気になろうと思う。
by pippinrose
| 2012-10-12 07:19
| 震災
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Comments(12)
まず、曼珠沙華の写真がすばらしいと感じました。
こちらに何か語りかけて来ます。 芸術作品を作る事と、祈る事の違い、、 あらためてじっくり考えてみました。 出来上がった作品の事だけではなくて 創作の過程に大きな違いがあって、 それは人間が細胞で感じるもので、 大きな何か感謝に近いようなものでしょうね。 それを「感動」と一言で言って 事足りるものではないけれど、、、
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ぴぴん
at 2012-10-12 19:11
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はるこさん ありがとうございます。
オストの作品からは、自然のこういう造形が連想されます。 原始的な芸術は多くが宗教的な意味を帯びていますが、 近現代の芸術は、両者が分かれていて、 蓮のように宗教的な象徴を帯びたものを用いたとしても、 祈りとは無縁の作品も可能です。 象徴の力を発動させるのも、それを行うひとの何かですね... はるこさんの言われるように、それは知的な思考というよりは、 もっと身体的なところに根ざしているように、わたしも感じています。
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ミセスサニー
at 2012-10-13 11:04
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そういう番組があるのですね。わかりました。
多くの華道家が祈りをテーマに生けていると思います。 発信と受信が響きあう場面にはなかなか出会えません。 ハスの花は、きれいな花の中で一番大きい。 水揚げが難しく、長時間は持たない、らしい。 ハスの花は私たちにとって象徴的であり、 しかも、芽が出て枯れるまですべてが画になる。 食べることもできる。 ハス池は私にとって贅の極みに思えます。
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ぴぴん
at 2012-10-13 19:52
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ミセスサニーさん 30分間とは思えない濃密な番組でした。
来週火曜の午後2時から再々放送です。 >発信と受信が響きあう場面にはなかなか出会えません。 なるほど、花も、そういうものなのですね。 であればこそ、 そういう場面に出会えた時の感動が深いのでしょうね... >水揚げが難しく そうなんですね。そのためでしょうか、 オストは切り口をとても広く取っていました。 今回彼が生けたのはレンコン用の蓮でした。 そのあたりのエピソードも面白いです。 ハスはパワフルですね。 多くの人にとって特別な花であり続けている理由が分かります。 わたしも、ベランダでは泥土の管理が難しいと分かりながら、 なかなかきっぱり諦められないません。
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クミン
at 2012-10-14 21:42
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ぴぴんさん、こんばんは^^。
私はぴぴんさんとこのブログが好きなので もう一段元気になってほしいです。 祈りと芸術の話、私も思うところがありました。 でもなかなか考えがまとまらず、何も言えない自分がもどかしいです。
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ぴぴん
at 2012-10-15 09:11
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クミンさん ありがとうございます。
元気になる工夫をして行きます。 わたしは祈るということがよく分からなくて、 長年このあたりを考えていました。 言葉にしようとすると難しく、芸術や祈りと言葉とは、 不調和なのかもしれないと思います。 それでもこの番組のおかげで、今の自分としては「こんなこと」と 言えるようになり、ありがたかったです。
ぴぴんさん、こんばんは。
教えていただいたのでおかげさまで録画してみることができました。 見終えたばかりなので自分がどのように感じたのかなどまだまとまりませんがとにかくお礼を、と訪問しました。 蓮の群生を船で見て周るところはまさしく私の住む市内の沼でした。 お盆の時期に同じ沼の蓮を見て行かれたのかと思うと感慨深いです。 白い蓮の花を分けてもらうときに気持ちが逸るあまり泥の水路にはまってしまう場面には苦笑してしまいました。 きっと見たことのない風景だったのかもしれませんね。 農家の方には見慣れた蓮田でも芸術家からみればお宝なのでしょう。 お弟子さんたちとお寺で生けた白い蓮の花はほんとうに神々しくお仏様になった方たちに相応しい花に思えました。 こちらではお盆にはお墓に蓮の葉の上に洗った米と細かく刻んだキュウリを合わせたものを備えます。 手に入れば蓮の蕾も・・・・ オストさんの作品を見ながらやはり蓮と霊は添うものとあらためて感じました。 うまくお伝えできませんがありがとうございました。
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Junko
at 2012-10-17 08:32
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おはようございます。
私も番組を見ることが出来ました。ありがとうございます。 ミントさんのコメントも興味深く読ませていただきました。 食用のハスの花は白いのですね。初めて知りました。 お弟子さんの悲しみに寄り添い、何とかしてあげようというオストさんの一心が、ハス農家さんをはじめ、ご近所さん、お寺の人々、最終的にはお弟子さんまでを動かす様子に心が温まりました。 「今あるものを大事にして一歩踏み出そう。」みたいなことをおっしゃっていたのも心に残っています。 オストさんのお弟子さんを思う情熱から作品が生み出されていく様子に、「生け花」が「芸術」として昇華される過程を見たような気がします。 短い時間でしたが素晴らしい時間を過ごすことが出来ました。 来年の夏、ハスの花を見るのが楽しみです。
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ぴぴん
at 2012-10-17 11:08
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ミントさん 八月にミントさんの伊豆沼の記事を読んでいた時には、
後日こんな番組を見るとは思ってもみませんでした。 伊豆沼の蓮はかならずしもお盆に一斉開花するわけではないと 書かれているのを改めて読み、ひとしお感じるものがありました。 「オストさんは蓮が好きだから」と、案内された生徒さんの心づかいが その後の流れを決めた。そのことに感じ入ります。 蓮田にはまる姿もすてきでした。あの姿も含めて、 生徒さんは再度活ける気持ちへと運ばれたように思います。 蓮の葉と蕾に洗米と刻んだキュウリとは、瑞々しく清らかですね。 蓮は、葉に乗った水さえも特別なものに変える。 本当に、「蓮と霊は添うもの」ですね... ミントさんに番組を見ていただけて、感想をお聞かせいただけて、 とても良かったです。ありがとうございました。
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ぴぴん
at 2012-10-17 12:50
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Junkoさんも ご覧になりましたか。
"Why concentrate on what we don't have. We better concentrate on what we have, whether we like it or not. We have to accept because we can't change it. We are too small for that." 「失ったものに集中するのではなく、今あるものに集中した方がいい。 それが好ましくても好ましくなくても。 今あるものを受け入れなくてはならない。 人間の力は小さく、失ったものを取り戻すことはできないのだから。」 ... この英知が力になるのは、 痛みがいくぶん癒えてからであるように思いますが... わたしはここ数週間、この言葉を繰り返し思い返す中で、 「もう一段元気になろう」と思いました。 完成品だけ見ていてはわたしには分かり得なかったところを 見せてもらい、なんと言うか、謙虚な気持ちになりました。 確かに、この番組の記憶は、 来年の蓮の見え方を変えるかもしれませんね。 わたしも楽しみです。
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ミセスサニー
at 2012-10-17 21:34
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ピピさんの発信で見ることができました。
ミントさんのブログで見たあの蓮池だなあと思ったり、 つながりを感じました。 ハスの魅力、植物を使った芸術家としての造形力、 人や場所、たくさんの要素が助け合って作品になった そこのところがよくわかる内容でした。 すてきでしたね。 「今あるものに集中したほうがいい・・・」と聞いて、 「あなたの前に道がある」という牧師の言葉を信じて励まされたことを思い出しています。
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ぴぴん
at 2012-10-18 19:44
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ミセスサニーさん お返事が遅くなりました。
>たくさんの要素が助け合って作品になった 本当ですね。 花にかぎらず、結実した部分だけを切り取って、 感想を持つことが多いわけですが、 それが登場するまでの過程や背景や関係の 織り成すものをかいま見ることができて、 作品を通して感じるものが複雑になりました。 すてきな体験でした。 >今あるものに集中したほうがいい... 「人間は小さい」というかなしみを前提にして、 そういう者としてした方がいいこと、なんですね... その牧師さんやオストさんのような、 自分よりも少し元気で励ましになってくれるひとがあり、 その言葉が沁みて力にできる自分であることは、ありがたいですね。 立ち止まったりふりかえったりすることもまた、 前にある道をたどる過程の一部ではないかと思いつつ。歩を進めます。
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