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2014年 06月 05日
本Aの原稿を入稿したのち
同時進行で何冊も本を読んでいたのは、 長距離走でゴールした人が立ち止まれずに 走り続けるようなものだったらしい。 同時進行の冊数が減るにつれて 思い詰めていた構えがゆるみ、 机や椅子に積まれていた資料を払って、 部屋の景色がおだやかになった。 その間、皮膚がかぶれたようになり、 カサカサになってはがれ落ちた。 「脱皮する、ということかしら」 と思いつつかゆみに耐えた。 * * * * 私には以前「脱皮願望」があったが、 その背景にあった表面と内面の不調和の感覚は、 震災と本の作業と通学の決意の中で薄らいでいる。 いま心になじんでいるのは、 「木の実モデル」だ。 冬芽の殻を脱しあっぱれ開花したのち、 人目を引く派手な変化はもうせずに、 木の実はだんだんふくらみ色づく。 外観は内側の過程を映し出す。 時が来ればその実は 食べられたり落ちたりして種になる。 実生は親のものではなく独自の存在になる。 どのようになるか統制できず、 委ねるしかないところに、 すがすがしさとさびしさがある。 * * * * 本の発刊(リリース)は、 この本に注いだ時間からの解放(リリース)。 そしてそれがどう育つかは、 種が落ちた環境と目を留めた人の手に委ねられている。 その種について語ることはこれからもするにしても、 自分の元から手放す(リリースする)時を迎えた安堵感がある。
by pippinrose
| 2014-06-05 09:48
| 活字
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